名古屋地方裁判所 昭和42年(ワ)3500号 判決 1968年11月28日
主文
原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
原告訴訟代理人は「被告等は各自原告に対し別紙物件表記載の各機器を引渡せ」との判決並びに仮執行の宣言を求め、その請求の原因として
(一)原告はエアロマスターと称する冷暖房機器の販売を目的とする会社であるが、昭和四一年九月二日冷暖房装置の設計、施行等を目的とする訴外太協物産株式会社(以下太協物産と称する)から冷暖房機器(エアロマスターAF三〇〇〇、但しバルプ弁AF一五A付)二〇台を代金三六〇万円にて買受けたい旨の注文を受けた。
(二)原告は右注文に応じ昭和四二年二月一五日太協物産と右機器を被告森田興産株式会社(以下被告森田興産と称する)経営の森田コーポ(共同住宅)に送付納入すること、代金支払方法として太協物産振出の約束手形三通((1)額面金一二〇万円、振出日昭和四二年四月一五日、支払期日同年八月二〇日、支払地振出地とも名古屋市、支払場所東海銀行御園支店、(2)額面金一二〇万円、支払期日昭和四二年九月二〇日、その他前同様、(3)額面金一二〇万円、支払期日昭和四二年一〇月二〇日、その他前同様)を交付するも代金完済まで所有権を原告に留保すること、右手形が一通でも不渡となつたときは原告は何らの催告を要せず売買契約を解除することができる旨特約して、右機器をその指定場所に納入した。
(三)太協物産は昭和四二年六月二〇日手形不渡を出し、ついで債務整理を発表し、前記約束手形が不渡りとなることが予想されたので、原告は昭和四二年六月二四日から同年七月二五日までの間数回にわたり太協物産に対し口頭をもつて右売買契約を解除する旨の意思表示をなした。
(四)仮に右解除が認められないとしても、原告は昭和四二年九月二五日太協物産に対し郵便をもつて該書面到達后三日以内に売買代金を支払うよう催告し、若し右期間を徒過すれば本件売買契約は当然解除となる旨条件付契約解除の意思表示をなし、該意思表示は同月二七日太協物産に到達したのにかかわらず、太協物産は右期間内に代金を支払わなかつたので、本件売買契約は同月三〇日限り解除となつた。
(五)仮に右主張が認められないとしても、原告は昭和四二年六、七月頃被告森田興産及び太協物産との間に本件機器につき太協物産が原告に対し代金決済しない限り被告森田興産及び太協物産の収支関係にかかわらず原告の所有物件とする旨の合意(甲第三号証)をなしたものである。
(六)しかるに被告等はそれぞれ別紙物件表記載の通り本件機器を占有している。
(七)そこで、原告は被告等に対しそれぞれ本件機器の引渡を求める。
と陳述し、被告等の主張に対し
(一)被告等主張の即時取得の抗弁を否認する。
(二)太協物産の代表取締役恩田忠幸は被告森田興産の取締役に就任しており、恩田忠幸と被告森田興産の代表取締役森田正は親友関係にあり、かつ右両会社は同族会社の如き関係にあつて両社の内部事情は相互に熟知の特殊関係にあつたので、被告森田興産は原告と太協物産との本件売買契約の内容及び本件機器の代金未払の事情を熟知していたものである。
従つて、被告森田興産は悪意であるから、本件機器の所有権を即時取得したことにはならない。
と陳述した。
立証(省略)
被告等訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、答弁並びに主張として
(一)原告の主張事実中、被告等がそれぞれ別紙物件表記載の通り本件機器を占有していることは之を認めるけれども、その余の事実を争う。
(二)被告森田興産は昭和四一年七月太協物産と工事請負契約を締結し、代金は金七八四万八〇〇〇円、工事完成は昭和四二年二月八日の約旨で森田コーポ新築工事の空気調和設備工事を施行させたのであるが、本件機器を単価金一九万五〇〇〇円、総額金三九〇万円で設置する契約も右請負契約の中に包含されていたものであつて、本件機器は被告森田興産の所有に属する。
(三)仮に本件機器が原告の所有であつたとしても、被告森田興産は本件機器を平穏かつ公然に占有を始め、善意無過失であつたから、本件機器の所有権を即時取得したものである。
(四)被告森田興産を除くその余の被告等は被告森田興産から本件機器を設置してある各室を借入れて各自営業に従事しているものである。
と陳述した。
立証(省略)
(別紙)
物件表
被告森田興産株式会社所有森田コーポラス内所在
室番号 被告(占有者)氏名
二階一号 ルビアン美容室こと石田修造
二階二号 森田泰江
二階三号 小西楯夫
三階七号 横地清三
三階八号 名古屋菱重興産株式会社
三階一〇号 丸美木材株式会社
四階一二号 飯島高弘
四階一三号 株式会社シナ忠
四階一五号 森千枝子
五階一六号 坂巻広
五階一七号 湯浅英世
五階一八号 真木弘子
五階二〇号 藤沢富美子
六階二三号 ドナルドニユーカム
六階二五号 中部富士電機家電株式会社
右各室に備付けある冷暖房機器(エアロマスターAF三〇〇〇、但しバルブ弁AF15A付)各一台、
被告森田興産株式会社は右全部及び三階六号室、四階一一号室、六階二一号室、六階二二号室所在占有の各一台